セミナー(時間外労働)

鳥取工業組合は働き方改革に関するセミナーを実施しました。

鳥取県板金工業組合は組合員を対象に、社会保険労務士を招いて「働き方改革」に関するセミナーを実施しました。このページではセミナーの要約をご覧いただけます。

時間労働の条件が罰則付きで法律に規定されました!

時間外労働の上限とは

労働時間・休日に関する原則

労働時間・休日に関する原則

今回の改定で定められたこと

今回の改定で定められたこと
※施行:大企業/2019年4月~ 中小企業/2020年4月~
特別条項の有無に関わらず、1年を通して常に、時間外労働と休日労働の合計は月100時間未満、2~6ヶ月平均80時間以内にしなければなりません。うっかりしていると超えてしまいますので気を付けてください。

違反した場合には、罰則(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科されるおそれがあります。
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上限規制のイメージ

上限規制のイメージ
限度時間の月45時間、年360時間は、改正前は大臣告示ということで法律ではありませんでしたが、今回の法改正で罰則付き法律になりました。 これからは厳格に取り扱わなくてはなりません。

経過措置について

施行に当たっては経過措置が設けられており、2019年4月1日(中小企業は2020年4月1日)以後の期間のみを定めた36協定に対して上限規制が適用されます。2019年3月31日を含む期間について定めた36協定については、その協定の初日から1年間は引き続き有効となり、上限規制は適用されません。

経過措置についての図
極端な例で言うと中小企業については2020年3月31日に旧様式で提出すればその日から1年間は経過措置を取れることになります。
上限規制が猶予される事業・業務がありますが、猶予後に向けて、今から上限規制に対応できるよう、取り組んでいくことが大切です。

所定と法定の違い

今回の法改正の内容を正しく理解していただくには「時間外労働」と「休日労働」について法律上の規定を正しく理解していただくことが必要です。

時間外労働

法律上の時間外労働 法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超える労働時間のこと。
所定時間外労働 契約で定められた労働時間を超える労働のこと。
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例えば、所定労働時間(契約で定められた労働時間)が9:00~17:30で、30分残業した場合(休憩12:00~13:00)

時間外労働のイメージ図

残業手当の算定基準を「所定労働時間」を超える時間とするか、「法定労働時間」とするかは、労使の定めが必要です。

休日労働

法律上の休日労働 労働基準法で定められた法定休日のこと。
原則1週間につき1回休日を与えなければなりません。
所定休日 会社で定められた休日のこと。
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例えば、毎週土曜・日曜を所定休日とし、休日出勤をした場合

休日労働のイメージ図
月曜~土曜までに労働した時間が40時間を超えていた場合には、超えた時間は「時間外労働」にカウントされるので、注意が必要です。 また、就業規則に日曜日を法定休日としているかどうか、確認・見直ししておくことをお勧めします。

労働時間の適切な把握(労働安全衛生法の改正)

使用者には、労働時間を適正に把握するなど労働時間を適切に管理する責務があります。

健康管理の観点から、裁量労働制が適用される人や管理監督者も含め、すべての労働時間の状況がタイムカードによる記録、PC等の使用時間の記録等の客観的な方法その他適切な方法で把握されるよう法律で義務付けられました。事業者は、労働時間の状況の記録を作成し、3年間保存する必要があります。

タイムカードの打刻時間は労働時間として見られるので、実際に業務に関わっていない時間が含まれるようであれば、事業主がそれを証明しなければなりません。 うっかりタイムカードを打刻し忘れた場合は、事業主が労働時間を確認しないといけません。

36協定の締結について

時間外労働・休日労働は、必要最小限に留められるべきものであり、労使がこのことを十分意識した上で、36協定を締結する必要があります。

36協定の範囲内で労働させた場合であっても、労働者の安全配慮義務を負うことに留意しなければなりません。
労働時間が長ければ長いほど過労死との関連性が強まることに留意する必要があります。

「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について(※)」において、下記に留意しなければなりません。※平成13年12月12日付け基発第1063号厚生労働省労働基準局長通達

  • 1週間当たり40時間を超える労働時間が月45時間を超えて長くなるほど、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が徐々に強まるとされていること
  • さらに、1週間当たり40時間を超える労働時間が月100時間又は2~6ヶ月平均で80時間を超える場合には、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が強いとされていること

限度時間を超えて労働させる労働者の健康・福祉を確保

限度時間を超えて労働させる労働者の健康・福祉を確保するための措置について、次の中から協定することが望ましいことに留意しなければなりません。

  • 医師による面接指導
  • 深夜業(22時~5時)の回数制限
  • 終業から始業までの休息時間の確保(勤務間インターバル)
  • 代償休日・特別な休暇の付与
  • 健康診断
  • 連続休暇の取得
  • 心とからだの相談窓口の設置
  • 配置転換
  • 産業医等による助言・指導や保健指導
臨時的な特別な理由がなければ、限度時間(月45時間、年360時間)を超えることはできません。
限度時間を超えて労働をさせる場合は、できる限り具体的に定めなければなりません。
この場合、時間外労働は、限度時間にできる限り近づけるよう、努めて下さい。

36協定届の新しい様式

中小企業であれば2020 年4月以後の期間のみを定めた36協定から、新しい様式で届出することになります。
ただし経過措置期間中であっても、上限規制に対応できる場合には新しい様式で届出してもかまいません。

注意すべきポイント

「1日」「1ヶ月」「1年」について、時間外労働の限度を定めてください。

従来の36協定では、延長することができる期間は、「1日」「1日を超えて3ヶ月以内の期間」「1年」とされていましたが、今回の改正で、「1ヶ月」「1年」の時間外労働に上限が設けられたことから、上限規制の適用後は、「1日」「1ヶ月」「1年」のそれぞれの時間外労働の限度を定める必要があります。

新様式には「1日」「1ヶ月」「1年」のそれぞれの時間外労働の限度を定める必要があります。それぞれ法定労働時間を超える時間数の欄と、所定労働時間を超える時間数(任意)に分かれていますので気を付けてください。

協定期間の「起算日」を定める必要があります。

1年の上限について算定するために、協定期間の「起算日」を定める必要があります。

時間外労働と休日労働の合計について、月100時間未満、2~6ヶ月平均80時間以内にすることを協定する必要があります。

36協定では「1日」「1ヶ月」「1年」の時間外労働の上限時間を定めます。しかし、今回の法改正では、この上限時間内で労働させた場合であっても、実際の時間外労働と休日労働の合計が、月100時間以上または2~6ヶ月平均80時間超となった場合には、法違反となります。 のため、時間外労働と休日労働の合計を月100時間未満、2~6ヶ月平均80時間以内とすることを、協定する必要があります。36協定届の新しい様式では、この点について労使で合意したことを確認するためのチェックボックスが設けられています。

労使で合意したことを確認するためのチェックボックスに気を付けてください。

限度時間を超えて労働させることができるのは、「臨時的な特別の事情がある場合」に限ります。

限度時間(月45時間・年360時間)を超える時間外労働を行わせることができるのは、通常予見することのできない業務量の大幅な増加など、臨時的な特別の事情がある場合に限ります。

臨時的限度時間を超えて労働させる必要がある場合の事由についてはより具体的に定めなければ通りません。限度時間を超えない場合と特別条項が同じではいけません。
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ここにも注目!過半数代表者の選任

36協定の締結を行う労働者の代表は、労働者(パートやアルバイト等も含む)の過半数で組織する労働組合がない場合には、労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)が行う必要があります。

過半数代表者の選任に当たっては事業主に近い方でないことに気をつけてください。(管理監督者でないこと)36協定締結をする者を選出することを明らかにした上で、投票・選挙等の方法で選出すること(くじはだめ)使用者の意向に基づいて選出された者でないこと。また、過半数代表者を選出した際の記録を残すことが必要です。

労働時間管理の実務のイメージ

具体的な数字を用いて、今回の法改正に対応した労働時間管理の実務をみていきます。

時間外労働・休日労働について、36協定を締結します。

まずは上限規制の内容に適合した36協定を締結します。以下では、36協定で次のような内容を締結したケースについて、具体的な実務内容を見ていきます。

締結内容(例) 締結内容(例)
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以下について、それぞれ、法律で定める上限の範囲内にしなければなりません。

A•••月45時間以内、年360時間以内
C•••年6回以内
D•••年720時間以内
E•••月100時間未満

毎月の時間外労働・休日労働の時間数と、その合計を把握します。

各労働者ごとに労働時間を把握し、1日8時間・1週40時間を超える時間外労働、休日労働の時間数と、その合計を把握します。

時間外労働・休日労働の時間数の内訳

年度 (=36協定の対象期間) における
  • 時間外労働が月45時間を超えた回数 (特別条項の回数)
  • 時間外労働の累積時間数
を把握します。

2.で把握した時間外労働時間数をもとに、年度 (=36協定の対象期間) における、特別条項の回数と時間外労働の累積時間数を把握します。

月45時間を超える回数の累計値を算出

月45時間を超える回数の累計値を算出

時間外労働の累計値を算出

時間外労働の累計値を算出

毎月の時間外労働と休日労働の合計時間数について、
2~6ヶ月の平均時間数を把握します。

2.で把握した時間外労働と休日労働の合計時間数をもとに、2ヶ月平均、3ヶ月平均、4ヶ月平均、5ヶ月平均、6ヶ月平均を算出します。

例えば、2021年9月については前月までの実績をもとに以下のように2~6か月平均を算出します。

2~6月の平均

同様に他の月についても2~6か月平均を算出するため、すべての月について、隣接する2~6か月の平均が80時間以内となるよう管理しなければなりません。

上限を超えていないかしっかり管理していかなければいけません。

法違反となるケース

時間外労働が月45時間を超えた回数が、年間で7回以上となった場合

時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6回以内であり、以下の例は法違反となります。

時間外労働が月45時間を超えた回数が、年間で7回以上となった場合1

単月で時間外労働+休日労働の合計が100時間以上となった場合

以下の例のように、1か月でも100時間以上となれば法違反となります。

時間外労働が月45時間を超えた回数が、年間で7回以上となった場合2

時間外労働+休日労働の合計の2~6か月平均のいずれかが80時間を超えた場合

以下の例のように、2か月平均では問題がなくても、3か月平均で超える場合などは法違反となります。

時間外労働が月45時間を超えた回数が、年間で7回以上となった場合3

その他、36協定で定めた時間を超えた場合にも法違反となります

最後に…

労働時間の状況の把握は労働者の健康管理がベースです。

労働者から申出があった場合の医師による面接指導の対象を「1月当たり100時間超の時間外・休日労働」から「1月当たり80時間超の時間外・休日労働」へ要件が見直しになりましたので気を付けていただきたい。

そして、働き方改革により、長時間労働の抑制など雇用環境の改善に取り組むことは、労働者の健康リスクを減らすことだけでなく、仕事に対する労働者の意識やモチベーションを高め、その有する能力がより発揮されることで、業務効率の向上にプラスの効果が期待され、組織の成長・発展につなげることができます。

従来の働き方を見直すきっかけになると、プラスに捉え取り組んでいただければと思います。